地域共生社会の実現を図るため、複雑化・複合化したニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制を整備する観点から、「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」により社会福祉法が改正され、令和3年4月から施行されました。これにより「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施する「重層的支援体制整備事業」が始まり、各区市町村の実情に応じた体制づくりが始まっています。 令和5年3月現在、都内では7つの自治体がこの重層的支援体制整備事業を実施しています。また、17 の自治体が移行準備事業を実施しており、令和5年度以降、順次本格実施に移行していく予定です。各自治体では、これまで積み上げてきた取組みを活かしながら、本事業の5つの事業である「包括的相談支援事業」「参加支援事業」「地域づくりに向けた支援事業」「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」「多機関協働事業」の整備を進めているところです。 東京都社会福祉協議会では、令和3年 10 月から令和5年1月にかけて、重層的支援体制整備事業を実施している7つの自治体の区市町村社会福祉協議会(以下、区市町村社協)に取組み状況のヒアリングを実施しました。区市町村社協の本事業への関わり方は、各自治体によってさまざまですが、地域福祉の推進を担ってきた区市町村社協が、どのような形であれ、その力を発揮していくべき事業であることは明らかです。そこで、ヒアリングした内容をもとに、プロジェクトチームで本事業に社協が取り組む際のポイントを整理しました。ポイントは大きく「それまでに地域で積み上げてきたものの延長に」「どのような層の支援を強化するか課題を絞り明確化」「継続的な関わりのプロセスを評価する」「福祉施設・事業所、民生・児童委員活動、住民活動に対して取組みを可視化し連携」の4つに整理されました。 今、コロナ禍で新たな地域課題が顕在化していますが、重層的支援体制整備事業を活用して、そのような課題に対応する取組みも見られています。しかし、課題は複雑化、複合化しており、多様な主体が課題を共有し、連携・協働していくことが求められています。地域で活動する多くの関係機関、関係者に重層的支援体制整備事業における取組みを知っていただけると幸いです。
商品詳細
7つの実施地区の実践からみえてきている4つのポイント
実施地区における取組みの特徴
重層的支援体制整備事業実施地区における社協の取組み
事例 1
包括的相談支援を担う各拠点 CSW を増員するとともに、社協本体の支えあい推進課に多機関協働担当 CSW を専従配置
―八王子市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
事例 2
地区ごとの包括的相談支援「福祉の相談窓口」とひきこもり支援に特化した多機関協働事業 ―世田谷区社協における重層的支援体制整備事業の取組み
事例 3
6つの圏域に地域福祉コーディネーターを複数配置し、市と社協に相談支援包括化推進員を配置するとともに、3つの重点対象者を設定 ―立川市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
事例 4
全職員による地域担当の取組みと「福祉何でも相談」を活かしてひきこもり支援と地域の居場所応援窓口を実施 ―中野区社協における重層的支援体制整備事業の取組み
事例 5
地域福祉プラットフォームを活かした、ひきこもり等の複合的課題を抱えた方へのアウトリーチ等積極的な個別支援と地域づくり ―墨田区社協における重層的支援体制整備事業の取組み
事例 6
ほっとネットステーションにおける地域福祉コーディネーターの取組みを活かした事業実施 ―西東京市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
事例 7
3つのエリアに配置する CSW がアウトリーチを通じた支援事業を担うとともに、相談支援包括化推進員を兼務。
市の相談支援包括化推進員とお互いの強みを活かして、支援・つなぎ・出会いを重層化する。 ―狛江市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
重層的支援体制整備事業に向けた 社協の取組み方策検討プロジェクト